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大学入試の仕組みを理解しよう
日本最大規模の試験「センター試験」
大学入試と聞いて、まず「センター試験」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? センター試験の正式名称は「大学入試センター試験」で、独立行 政法人「大学入試センター」が実施する試験です。センター試験は毎年1月中旬の土・日曜の2日間に全国で一斉に実施され、毎年50万人以上が受験する日本 最大規模の試験です。
国公立大学の一般入試受験者は、原則、センター試験を受験しなければなりません。また、多くの私立大学でもセンター試験の成績が利用できる「センター試 験利用方式」を設定しています。大学進学を考える受験生にとって、このセンター試験対策は必須といっても過言ではないでしょう。
これからの大学入試~2020年度から変わるセンター試験~
現在の大学入試には切っても切れない大学入試センター試験(以下センター試験)。2020年度よりこのセンター試験を廃止し、新しく「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入する動きが文部科学省で進んでいます。
従来の知識偏重型のテストから、知識を前提にそれを活用する思考力・判断力・表現力を問うテストへと変えるのが狙いです。大きなポイントは従来のような マーク式の問題に加えて記述式の問題が導入されることです。記述式導入の対象教科は当面「国語」と「数学」とされており、設問の条件に沿って短文で解答す る問題となる予定です。一方従来のマーク形式の問題に関しても、複数の資料から様々な情報を組み合わせる必要のある問題や正解が1つに限られない問題な ど、より思考力・判断力を重視した出題が検討されています。基本的な知識が定着していることを前提に、より高度な能力が求められることになるでしょう。
このような入試改革と同時に、高校教育改革の一環としてもう一つの新テスト「高等学校基礎学力テスト(仮称)」導入の動きも進んでいます。こちらは 2019年度より実施される予定です。必履修科目である「英語」「数学」「国語」の学習到達度を把握することを目的としており、生徒の学習意欲の喚起や学 習の改善に利用します。基礎学力の把握が主な目的ですが、将来的には大学入試や就職の際に用いられることも想定されています。
問題の例はある程度公表されていますが、まだまだ検討中の部分が多く残っています。これらの新テストの具体的な内容については、2017年度初頭に「新テストの実施方針」として文部科学省より公表される予定です。
センター試験はマーク式で基礎的な内容
センター試験は国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語の6教科30科目で構成されます。この中から、最大8科目(理科①を選択した場合は9科目)を受験できます。受験生は、志望大学が指定する教科・科目を選択して受験することになります。
● 2017年度大学入試センター試験 出題教科・配点・試験時間一覧
教科 | 科目 | 配点 | 試験時間 | 選択方法 | |
国語 | 『国語』 | 200点 | 80分 |
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地理歴史 | 世界史A 世界史B | 1科目 | 1科目選択 | 10科目から最大2科目を選択解答する(同一名称を含む科目の組合せは不可) | |
公民 | 現代社会 倫理 政治・経済 | ||||
数学 | ① | 「数学Ⅰ」『数学Ⅰ・数学A』 | 100点 | 60分 | 2科目から1科目を選択解答する |
② | 「数学Ⅱ」『数学Ⅱ・数学B』 | 100点 | 60分 | 4科目から1科目を選択解答する | |
理科 | ① | 「物理基礎」 | 2科目 | 2科目選択 | 8科目から下記のいずれかの選択方法により科目を選択解答する |
② | 「物理」 | 1科目 | 1科目選択 | ||
外国語 | 『英語』『ドイツ語』『フランス語』 | 200点 | 80分 | 5科目から1科目を選択解答する | |
「英語リスニング」 | 50点 | 60分 | 英語受験者のみ |
※「地理歴史および公民」「理科②」の2科目選択者の試験は、解答順に第1解答科目・第2解答科目に区分し、各60分で実施する。試験時間130分には第1・第2解答科目間の答案回収等の時間10分を含む
※「英語リスニング」の解答時間は30分、試験時間60分には機器の動作確認等の30分を含む
それぞれの試験時間帯で受験できる科目は、地理歴史・公民と理科は最大2科目(理科①を選択した場合は3科目)、そのほかの教科は1科目となっています。また、「英語」の受験者には、筆記試験とは別の時間帯で実施される「リスニング」が必須となっています。
出題は全教科とも「マークシート方式」で実施されます。問題はそれぞれの教科の基礎の部分をしっかりと身につけているかどうかに重点が置かれています。 平均点は6割程度となるように作問されており、それほど難問が出題されることはありません。高校の授業や教科書の内容を着実に身につけていれば解答できる 問題です。ただし、科目によっては問題数が多く、解答するスピードが要求されます。過去問に取り組むなどして、時間内に解答する力をつけておきたいもので す。
「英語」受験者は必須となっているリスニング対策も欠かせません。リスニングは各受験者に配られるICプレーヤーで実施されます。試験内容はもとより、その独特な試験形式にも慣れるべく、予備校等が実施する模擬試験を活用するなど、しっかりと準備をしておきましょう。
なお、センター試験には、出願や受験の際に注意すべき点があります。次ページで、これらについて確認してみましょう。
国公立大学は定員の8割を一般入試で募集
● 国公立大学募集人員の割合
※数値は2016年度入試のもの(文部科学省資料より)
大学入試を大きく分けると、「一般入試(一般選抜)」と推薦入試・AO入試といった「特別選抜」と呼ばれるものがあります。表は国公立大学の募集人員の 割合を入試選抜方法別にみたものです。近年、募集人員枠が大きくなっているAO入試、高等学校長の推薦により出願できる推薦入試などもありますが、一般入 試の募集人員枠が全体の8割以上を占めていることからも、国公立大学志望者はまず一般入試での受験を考えて受験勉強をスタートさせるべきでしょう。
センター試験と2次試験(個別学力検査)
● 国公立大学一般入試のしくみ
ここからは国公立大学の一般入試の仕組みについてみていきましょう。国公立大学の一般入試は、1次試験的役割を果たす「センター試験」の得点と、大学別に実施される「2次試験(個別学力検査)」の得点の合計で合否を判定します。
国公立大学志望者は、1月中旬に実施される「センター試験」を原則受験しなければなりません。試験翌日には新聞等で解答・配点が公表されますので、自己 採点を行った後、志望する大学に願書を提出します。注意したいのが国公立大学の出願期間です。国公立大学の出願期間は、センター試験の約1週間後からス タートし、約10日間となっています。思うように得点できなかった場合は、当初考えていた出願校を変更しなければならなくなることもありえます。出願時に なって慌てないよう事前に複数の候補を挙げておくことが必要でしょう。
多種多様な私立大学の入試
私立大学の入試も、大別すると国公立大学と同じように一般入試と推薦入試、AO入試に分けられます。ここではまず、メインとなる「一般入試」の状況について確認していきましょう。
私立大学の一般入試では、国公立大学のように統一した入試日程は設定されていません。各大学が自由に入試日程、選抜方法を設定しています。また、国公立 大学と違い、試験日が重ならなければ何校でも受験できるのも私立大学入試の特徴でしょう。この一般入試は、各大学で試験を実施する「一般方式」とセンター試験の成績を利用する「センター試験利用方式」に大別できます。
一般入試のピークは1月下旬から2月中旬
私立大学の一般方式は、主にセンター試験が終わった1月下旬~2月中旬に行われます。
入試科目は大学によりさまざまですが、文系学部は英語・国語・地歴公民または数学から3教科、理系学部は英語・数学・理科の3教科を課すパターンが一般 的です。また、大学・学部の特性に応じ、入試科目や配点に特徴がある入試方式を実施しているところも多く、これらを組み合わせて1つの学部・学科で2つ以 上の入試方式をもつ大学も少なくありません。
代表的なものとしては、入試科目を1~2科目としたり、特定科目の配点比率を高くする方式があります。受験生から見れば科目を絞って勉強することができ るうえ、得意科目を活かせる入試となっています。このほか、学科試験を課さずに小論文や論述試験で選抜する方式や、外部英語試験(英検、TOEFL等)の スコア保持者や日商簿記などの資格取得者に点数を加点する方式なども見られます。
ただし、方式ごとの募集人員は、3教科型入試の比率が高い大学が一般的です。あくまでも3教科型入試の対策を基本としたうえで、他の入試方式は自分に適した方式があれば上手に利用するとよいでしょう。
● さまざまな入試方式の例(立命館大学国際関係学部の一般方式(2016年度))
方式 | 出題科目 |
学部個別配点方式 | 英語(100)、国語(100)、数学・地歴・公民から1科目選択(100) |
全学統一方式(文系) | 英語(150)、国語(100)、数学・地歴・公民から1科目選択(100) |
IR方式 | 英語(200)、英語外部資格試験(100) |
後期分割方式 | 英語(120)、国語(100) |
※( )内は配点
試験日自由選択制度や学外試験会場の設置も
● 私立大学の入試制度
私立大学の一般方式に統一した入試日程はないとはいえ、2月上旬頃には志望校の試験日同士が重なってしまうこともよくあります。
このため、多くの大学が設定しているのが「試験日自由選択制」です。試験日を2日以上設定しておいて、受験生が都合のよい日を選んで受験できるようにしています。さらに、複数の試験日を受験することを認めている大学も多くあります。
また、受験生が受験しやすいように試験会場をキャンパスの所在地域以外に設置する大学も多くあります。全国の主要都市に会場を網羅している大学もあり、 こういった大学では、直接大学まで行かなくても近隣で受験が可能です。交通費や宿泊費を節約できるだけでなく、時間的・体力的な負担も減らせるため受験生 にとっては便利な制度といえます。
大学入試のもう1つの柱~推薦入試
「推薦入試」は一般入試に次ぐ規模の選抜方式で、全体の9割以上の大学が実施しています。また、推薦入試で大学へ入学した人は、国公立大学では15%ですが、私立大学では40%となっています。私立大学においては、一般入試と並ぶ規模の入試といえるでしょう。
推薦入試の定義は「出身学校長の推薦に基づき、原則として学力検査を免除し、調査書を主な資料として判定する入試」となっています。一般入試との大きな 違いは、出身高校長の推薦を受けないと出願できないという点です。出願にあたっては「調査書の評定平均値○以上」といった出願条件も設定されており、誰も が受験できる入試というわけではありません。さらに、私立大学では「指定校制」といって大学が指定した高校の生徒を対象に行われる推薦入試もあります。
また、一般入試とは違い多くの大学では、「出願者は、合格した場合は必ず入学する者に限る」専願制の入試となっています(近年、他大学との併願が可能な併願制も増えてきています)。
推薦入試を考える場合は、出願するうえで制約があることと、原則第1志望校に限った入試であることを理解しておきましょう。
国公立大学の推薦入試
推薦入試も国公立大学と私立大学ではやや状況が異なります。国公立大学は私立大学に比べて募集人員が少なく、出願条件のうち成績基準も「評定平均値 4.0以上」など厳しくなっています。また、国公立大学の場合はセンター試験を課す場合と課さない場合の2タイプに大別され、その入試日程も大きく異なり ます。
大学での試験は「面接」「小論文」が課されることが多くなっています。学力試験を課す大学は多くありませんが、口頭試問を含んだ面接や学科に関連した専門的知識を要する小論文が課されることもあります。受験にあたっては、推薦入試向けの準備も必要です。
コラム①~国公立大学の医学科に多い「地域枠」推薦入試
国公立大学の医学科でも50大学中42大学で推薦入試が行われています。なかでも特徴的なのが、将来地元で医師として活躍することなどを出願条件にした「地域枠」推薦入試で、37大学で実施されています(2016年度入試)。
地域によっては医師不足が深刻となっており、将来地元に残って活躍する医師の育成が地域の課題となっているからです。そのため、地域枠推薦入試で合格・入学すると、卒業後に特定の地域で医師として働くことを条件に奨学金が受給できるといった例も少なくありません。
コラム②~東大が2016年度から推薦入試を実施
東京大学が2016年度入試から後期日程を廃止して、推薦入試を導入しました。2015年度までの東京大学の入試は一般入試のみで、推薦入試を実施したのは創立以来初めてです。
東京大学では推薦入試を導入することで、一般入試の合格者とは異なる潜在的な能力をもった学生を受け入れたいとしています。特定の分野に卓越した能力や 極めて高い意欲・関心が求められ、主に提出書類と面接で評価されます。ただし、センター試験の得点が概ね8割以上であることが目安となっており、一定の学 力も求められます。
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GMT+8, 2024-10-19 22:51
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